こずえレディースクリニック 院長ブログ:東京都目黒区祐天寺駅近く女性外来・心療内科「こずえレディースクリニック」布施梢院長ブログ
2009年06月14日

存在感を出すための工夫

最近、私生活で大きなイベントがなく、ちょっとつまらないモードに入っています。元々ドラマチックなこととは無縁なのでどおーってことないのですが・・

中学生の頃から父は私の存在感の希薄さをよく嘆いていました。見栄っ張りで嘘つきで、弱虫のくせにからいばりする濃いキャラの父から見ると、いつも人の陰に隠れているような私が頼りなげだったのでしょう。私の家族はうるさく激しい人たちの集まりなので私のおとなしさ?が異質だったのネ。影が薄いと言われ続けたので、存在感をだす工夫をしなければとやりだしたのが今に至る『ごっこ遊び』です。

それは或る役柄を設定して演じるというものです。今回は、母の形見(母は今も元気だし、品は自分で購入)の古時計を修理に出そうとしている世間知らずの独身中年女性という設定で行いました。実は30数年前に外国旅行先で自分で買った初めてのブランド物の時計でしたが、長期の酷使に耐えられず壊れてしまいました。近所の時計屋でもう部品はないから買い換えたほうが良いと言われていたのです。

昨日は気合を入れてお化粧し、持服で最もマシなものを着用して大手デパートにくりだしました。朝の時計売り場は閑散としていて、すぐに一番年配の店員さんがやってきました。ゆっくりと売場を往復してから、彼にその時計を見てもらい修理を依頼したところ、即座に部品がないから駄目だと断られました。

ここからが本番よ。泣きそうな顔つきをして「なんとかならないでしょうか?これは母の形見なので私にはかけがえのないものなのです!」と訴えて母が使用していた架空の歴史を披露して時間をかせぎました。店員さんはしつこい私に辟易し始めます。そこでもうひと押し、「なんとかできないでしょうか?きれいになおらなくとも身につけさえできれば良いのですが・・」というとブランド物は本社に送って修理するので当店では扱わないという返事です。それは分かっていたのでひるみません。「時間が狂ってもいいのです。ただ動いてくれさえすれば母が喜んでくれている気がするので・・」ってなことを延々とやっていると、とうとう彼は根負けして時計の蓋を開いてみてくれました。さすがにプロよ!動き出したし、切れた金属製のバンド゙も繋いでくれました。「これは応急処置だから保障できませんよ。」といって修理代を受け取りません。「こんなに素早くなおせるなんて、プロ中のプロだわ!天才だわ!ありがとうございます!」と大声で叫んで、呆れている店員さんたちを尻目に売場を去り、こんな善意の人のいる店に少しでも貢献できたらとの考えから好物の菓子をたくさん買って帰りました。

夜、夫にこの経過を話したところ「それは詐欺じゃないの?」と言われてしまったのですが、詐欺ではありません。店員さんの好意を引き出したことで、店も良い顧客(私のこと)を手に入れ、メデタシ、メデタシとなったからです。

かように私の『ごっこ遊び』も成熟して、味気ない日々にわずかな色どりを添えることになりました。これって対人関係に利用できると思いません?いろんなキャラを作って、きちんと役割分担させてやりこなせば、ミステリアス女性の出来上がり!影はキメラとなってシッカリ存在感を持つでしょう?

Posted by kozue : 20:56

2009年04月26日

欲望

私の母は今年で89歳になります。介護3の認定を受けており、60過ぎた妹が家で面倒を見ていました。母は元来、自分を美化する傾向が強く、母としても女としても完璧にこなしていると自負しているようでした。実際は、好きなことしかやらないという生き方で、子どもたちは母が自分で思うほどにはイノセントでもなければ、愛情深くもないと承知していました。この数年、認知症が見られるようになると家族に対して『良い人』の仮面はあっさり脱いでしまい、横暴な独裁者に変身しました。エゴを肥大させた欲の塊で、要求が通るまで執拗に周囲を攻め立てます。灰白質が薄くなったせいなのか、母の生き方に問題があるのかよく分からないと私は視ていました。先日、母は介護施設に入りました。当初は『良い人』のふりができていたようですが、この頃はまた『困った人』に戻ってしまいました。

昨日、私は『筍がり』の格安バスツアーに行ってきました。あの横殴りの雨にもかかわらず決行されてしまい、キャンセルするのももったいないので嫌々ながら行きました。早朝出発して、千葉に向かうほどに雨と風が強まりました。「まさか、筍は掘らないわよね。」と思ったのも外れて、鍬を持たされ、傘を首で押えながら掘ってる途中で傘が飛びました。泥がぬかるんで足元はずるーっと開脚するし、「こんなところで転んだら末代までの恥だ!」と力んだせいで体中痛くなりました。筍を3本採ってバスに戻り、これで終わりかと思っていたら、また外れて鋸山ロープウエイに乗るというじゃない。しかもロープウエイに乗車する前に全員で記念写真を撮るのです。雨が容赦なく吹き込む乗車場で「はい、笑ってください。」と言われても笑えないわよ。雨しか見えない景観を楽しみ、食事で終わりと考えたら、やはり甘かったわ。その後ポピーを一人10本摘むのだというのです。もうこれ以上濡れても同じだからという思惑があったのでしょう。鋏を持って、何色の花が咲くか分からない固いつぼみのポピーを適当に切ってきました。

かように試練にさらされたバスツアーでしたから、全ての行動は効率よく短時間でこなすことが要求されました。しかし、ゴールデンウイークの初日のためにツアー参加者が半端でなく多かったことと、大半が高齢者であったことがそれを妨害することになりました。日頃、『慎み深く、思いやりを持って行動しよう』を標語に掲げていた?私は目的のためには豹変してしまいました。何百人もいる人たちの先頭を切って歩き、真っ先に筍を掘り、ポピーを摘んで、一番早く食事を終えて、一番早くトイレに駆け込むような行動をしていました。しかもポピーは既定の倍数摘んでいました。

猶予のない状況になれば、私は認知症でもないのに簡単にエゴまる出しとなるのだと思い知りました。母からの遺伝でしょうか、人類のサガでしょうか。欲望をコントロールすることができるのでしょうか。お釈迦様のように俗界のしがらみ全てを捨てなければできないのでしょうか。上手に老いることなんて不可能なのかもしれませんね。

Posted by kozue : 23:55

2009年04月06日

桜、桜

満開の桜の下を行きつ戻りつしながら歩き、さらに車で通って、これでもかというほど桜を眺めてこの2日間を過ごしました。西行の句や平家物語の詩や梶井基次郎の短編に毒されている自分を感傷的な俗物だと十分認識しながら、過剰な自意識を秘めて桜の下にいるのは恥ずかしくて身がすくむ思いです。一人で桜を見ていると、過去を無かったものにしたいと思い、人は恥に恥を重ねて、さらに生きるしかないのだと思ってしまいます。桜は美し過ぎて対極にある『死』を連想するのだという人がいます。でも梶井の『桜の樹の下には』の着想は彼の体験から来たものだろうと私は考えています。なぜなら私の体験と重なるからです。

小学1年生の夏休み期間、私は祖母のいる田舎に預けられました。その時、村で葬式がありました。村中の人が集まって通夜をして、翌日葬儀が行われた後に埋葬されます。55年前の農村では死者は大きな木の桶に入れられて、田んぼを見下ろす人里離れた小高い山に埋葬されていました。夏のキツイ暑さをこらえて、細い山道をおおぜいの人が泣きながら桶の後にくっついて行きました。角型の木の棒が何本か立っているところが村の墓場でした。そこは山の斜面の一部を平らにしてあり、後ろには山のものとは異なる木が植えられてありました。男衆が穴を掘っている長い時間、私は手持ちぶさたでその木を眺めていました。その後、あの時の木が山桜だと知りました。墓の桜が咲いたところは見ていませんし、咲いてもソメイヨシノのような華やかさはなかったでしょう。薄桃色の雲のような桜が家の周辺でチラホラ見られるようになったのは昭和30年に入ってからだと思います。そのうち土葬もできなくなり、墓も移されてしまったのですが、私の記憶の中で、あの時埋葬された場所は桜の花びらが風に舞ってピンクの渦をつくっている場面として残ってしまいました。

息子が小学生になった時、家族3人で明治村に行きました。そこで思いがけぬ桜吹雪に出会い、薄桃色のベールに包まれてあまりの美しさに私は不安になりました。この瞬間を留めるには『死』しか方法がないのではと思われました。『美』の対極は『無』かもしれないと感じた一瞬でした。

街のあちらこちらに立派な桜並木が見られるようになり、温暖化の影響で早く育ちすぎて大木化し、既に老朽化をむかえた樹もあるようです。桜トンネルのような満艦飾はクリスマスのイルミネーションのようで、もう『死』からも『無』からも遠い気がして、不安は存在しません。それでも満開の桜を見ると毎年、ひどく心を乱されるのです

 

Posted by kozue : 01:22

2009年02月08日

個性と治療の関係

 

いつも風邪をひくと不思議に思うことがあります。現在、同居人はダンナ一人なので、どちらかが風邪をひくともう一方も感染することが多いのですが、その場合、同じウイルスが入ったはずだから症状も同じだろうと考えると似て非なる状態になります。風邪の基本症状は、ダンナはのどをやられて咳で締めくくり、私は頭痛で始まり下痢で終結する。途中経過にダンナは胃痛をみることが多いが、私は皆無。喉風邪の場合は、私は基本症状に少し上気道症状が増え、おなかの風邪ではダンナの便が緩むということになります。つまり個体によって弱いところが違うということでしょう。こんなことは誰でも気づいていることでしょう?でも、医者に診てもらうと、ほとんど同じ処方がだされます。私も、流行り風邪で来院した患者さんには同じ薬を処方します。せいぜい咳止め、下痢止めの薬を増加するぐらいの調節しかしません。はたして、これでいいのだろうか?もう少しきめ細かく変える必要があるのでは?と感じていても風邪は短期で治ってくれます。

問題は、『うつ病』のような、性格や状況に影響を受けやすい病気の場合です。現在の病気治療の王道は、まず、きちっとした診断をして、エビデンスのある治療を行うということになっています。すなわち診断が決定するとマニュアル通りのやり方がなされます。私もこのやり方でやってきましたが、何年か前から「これでいいのか?」と感じるようになりました。

『うつ病』の場合、メランコリー型を例にとると、生真面目な融通の利かない、責任感のある自罰的な人にこの病気が起こりやすいとされています。しかし、ドンピシャのモデルなんか見たことありません。とてもしたたかだったり、他罰的だったり、未成熟だったり、性格に問題がなかったりします。また、抱えてる状況もかなり異なります。もしも、性格が非定型うつ病様だとしてもメランコリー型と診断したら、その治療法を行います。ところが改善した後で分かるのですが、個性は病状で変化することは少なく、むしろ病気の経過を個性が決定しているように思われます。そういう機会があるたびに、病気に対する個性の関与はかなり大きなものだと再認識します。それでも、マニュアル通りの治療をしなければいけないのでしょうか?オーダーメード治療では統計も取りにくく、効果判定も難しくなります。大学病院あたりでこれをやろうものなら指導医に怒られてしまうでしょう。もし、オーダーメード治療がうまくいかなかったら、マニュアル通りにやっていたほうがずっと良かったというはめになってしまいます。リスクを考えると実行は難しいですよね。

とは言え、大雑把に原因で分類された治療が基本で、それに症状に応じた薬を足してゆくやり方は個体の特質を無視していて、洗練されたものには思えません。しかし漢方のように個体を主体にした、原因を問わない治療では片手落ちの感もします。まだ治療法も二分割思考の段階にあって、発展途上ということでしょうか。

 

Posted by kozue : 10:10

2009年01月10日

お得な性格

HPの年頭の挨拶にも書いたので恐縮ですが、もう一度、私の病気自慢の話です。

老人の病気自慢を聞いていると、どれほど罹患した病気が重いかで自慢の度合が上がってきますよね。でも私の場合はチョッと違っていて、いかに症状が突然に出現するか、しかも予想の範疇を外れていればいるほど誇らしくなってしまうのです。40年近く医者をやってきたのに、これっておかしくない?

疲労から年明けに風邪をひきダウンしました。前夜、さわやかに寝て、目覚めたら吐き気、嘔吐、下痢に突然襲われたのです。休日だから起きずにベッドに入って大人しくしていました。症状が激しいので何回もトイレに通ううちに、洗面所の鏡に映る顔がゲソッとしてきて、ちょうどその時読んでいた本が吸血鬼モノだったので、まるで血を吸われちゃったみたいと思いました。その後、鏡を見るたびに少しずつ唇が赤くなってきて、ついに吸血鬼に変身したかと考えたとき、鼻の頭と頬の高い部分が赤くなっています。それで理解しました。脱水状態による相対的な多血症が起きていて、毛細血管の一番見えやすい部分に現れたのだと。

ヤバイ状況なのに、なぜか「オオーッ!」っていう嬉しいに近い感覚でした。すぐに点滴を始めたので問題なかったのですが、肉体的にはかなり苦しかったです。しかし、うつらうつらしながらもこの経験の新鮮さのほうが勝っていて、正月休みとしては悪くなかった、としてしまうこの性格は貴重じゃない?

ポジティッブシンキングというのでなく、欲しいものがはっきりしているからでしょう。

「ヘエーッ!」とか「オオーッ!」とか驚くためなら、他のことは二の次ね。私の幼少時は日本が貧しかったから、欲しいものを買ってもらうという発想は無く、自分の要求は自分で解決するしか道がなっかたわ。だから身近な変哲ないものに自分なりの価値を見出すことで何とかしなければならなかった。このイジマシイ時代に助けられて、楽天的ともいえる性格を持ったことはすごいお得なことね。だって、 第一選択が『感動』にあれば、毎日新しい時間を生きるのだから、こんなに手に入れやすいものはないでしょう?不況の嵐の中でもウキウキいられますよ。

私は性格は自分で決めていいと思っています。だから『感動』を第一選択にすることをおすすめしたいです。

 

Posted by kozue : 15:47